Camera Raw 11.2 (Lightroom Classic CC 8.2、LrCC)アップデートと新機能『ディテールの強化』 |
CameraRaw11.2(Lightroom Classic CC 8.2)アップデート出ました!!(OSやグラボに対応条件があります。最後に書きます。)
今回も長い間、待ちに待った機能ですね。『ディテールの強化(Enhance Details)』が搭載されました。
\(^▽^)/
*また、大きサイズや大きな出力の時に有効やノイズ処理が良いなどの話がメインで語られそうですが、大事なポイントはそこだけじゃなくて、その根本の仕組みと結果の部分です。まぁ長くなるので、そこは別に書きたいと思います。
このアルゴリズムは最強です!(≧∇≦)b OK
『ディテールの強化』機能は、Rawデータのデモザイク処理(解析アルゴリズム)です。従来よりさらに強化し「より詳細(精細)に、ピクセル単位で解析し、アーティファクトの軽減、描画全体の色分離と解像を良くする」機能です。その解析結果を基に新たにDNGファイルを作成します。
もう少し詳しく言うと、機能に含まれるのは詳細なディテール解析及びエッジ表現、カラーレンダリングの改善でピクセル単位で色分離の良いデータを作ります。さらに微細なアーティファクトやモアレの軽減で偽色やデータの問題を少なくします。
Adobe的には[詳細補正]アルゴリズムを使用して、BayerベースとX-Transベースの画像データに対し解像度を最大30%向上させることが出来るようになったと言うことらしいです。
*これはフルRAWのみの機能です。下に書きますが、例えばキヤノンのM-RAWやS-RAWでは使えません。
*シグマ(カメラ)のDNGファイルはデモザイク前のRAWではありませんので、使用出来ません。
良くも悪くもいろいろ話題になりそうなので、詳しくは次回にまた書きますが、今回は簡単に新機能を紹介します。
新機能『ディテールの強化』によるメリットは大きく2つあります。
・ピクセル単位でより精細に色を分離して描画表現される。解像度が上がる。(結果、大きなサイズでの画像を扱う際にも有効)
・アーティファクト、モアレの軽減(必ずしもフリンジが軽減されるわけではありません)
元画像(描画)によって視認出来る内容には差がありますが、従来のアルゴリズムではピクセル単位の細かな描画のところでが、アーティファクトや周囲の色に覆われるように色分離せず、再現が悪かった部分があります。今回の新機能ではその部分に大きな効果があり、しっかりと表現されます。
従来のアルゴリズムではCamerRawはDPPやC1に比べ解像が悪いや再現が悪いなどと言われることもありましたが、今回の『ディテールの強化』アルゴリズムではより強力な解析が行われます。
その結果、解像度が上がり、いわゆる「シャープネス系の処理」の前に、テータとして色分離が良く、ディテール再現の良い元データが出来上がります。なのでほとんどの対象画像で今まで以上に細かく微細なディテールを保持したデータを持つことができます。
Adobeは大きな画像作る際にも有効と言いますが、ピクセル単位の描画が良くなると言うことは、そのまま色補正やシャープネスのベースになるので、通常の画像サイズでも効果はかなり違いが出ます。また、仕事では多いですが、予定よりも大幅に切り抜いた時など、残ったピクセルの描画がその後の処理に大きく影響します。ピクセル単位の分離はその後の補正処理に確実に役に立ちます。
モアレ処理とディテールの再現性能は、例えば最後に作例でも紹介しますが、写真館などスーツの細かな繊維やラインのような柄などの細かな成分に対し、モアレなどで偽色の裏にある崩れた描画の再現には強力に威力を発揮します。
デメリット
・ワークフローとしての手間
・『ディテールの強化』によるDNGのファイル容量
この機能はCameraRawのデフォルトの解析アルゴリズムには使用されません。個別で必要な画像に対し、『ディテールの強化』機能を使用します。デモザイク処理の解析で最大限に引き出された(作られた)情報量によって、出来上がる『DNGデータ』のファイル容量は3.5~4倍近くに膨れ上がります。その為、この機能は大量の画像処理には向きません。
機能の使い方
CameraRawダイアログを開くと、従来と違い「1枚だけの画像」でもフィルムストリップが左側に表示されます。
フィルムストリップ上で右クリックすると一番下に「ディテールの強化」が追加されています。
クリックすると『ディテールの強化』のウインドウが立ち上がります。
プレビュー内はデフォルトで100%表示になっています。プレビュー右下の虫眼鏡でフル画像表示との切り替えが出来ます。
プレビュー上ではハンドツールになっていますので、クリックしている間はディテールの強化が解除されます。
問題がなければ強化ボタンを押します。
すると書き出しが始まります。
書き出し時間はRAWのサイズやPCスペックによって多少変わります。
書き出しが終了すると、フィルムストリップに同じファイル名の 『DNGデータ』が出来上がります。
作例の元画像は元RAWが[24.14MB]ですが、出来上がったDNGは[83.02MB]になりました。
このファイル容量で不満が出たり、非常に悪く言ったりする方も出てくるかもしれませんが、そもそもデジタルの描画に関わる情報量、解像度、シャープネスとは何か?を考え直す必要のある方も多く出てくると思います。
Lightroom Classic CCの現像モジュールにも当然搭載されます。
目に見える効果の大小は描画によりますし、見る人の『見る力』によって変わるかも知れませんが、情報量が上がっている分の効果は確実にあります。
使用するタイミングですが、元RAWに対しRAW調整を行ってから『ディテールの強化』でも構いませんが、ノイズやモアレなどに対し適切な処理をするためには、先にDNGに変換している方が良いと思います。
繰り返しますが、最大のポイントはデモザイク処理の解析精度が上がることによりピクセル単位での描画表現が非常に良くなることです。
100%以下の表示ではあまり認識出来ないかも知れません。100、200%で全体の解像度が上がったことが認識出来ます。分かりやすく言えば解像度が上がり、全体の細かなシャープ感が増した感じです。400%以上では、エッジやライン、さらにより細かい描画の部分で、いわゆるピクセルシャープのように全体の解像度が上がっているのが分かります。
従来のデモザイク処理は一部の方からは「そもそもAdobeはRaw解析が悪い」と言われてましたが、当然Adobeとしては自信を持って提供してきたことですし、現状は表現とパフォーマンスとの兼ね合いでバランスをとっていますので、結果的に「それなり」の表現に収まっています。その解析では画像全体の中で小さい部分の表現が非常に悪く、例えば、石・砂場の僅かな雑草の緑が周囲の石の色に食われて薄くなったり、木肌や森の葉の色分離が悪かったりなど細かい部分の表現を良くも悪くも馴染ませることで処理してきました。
『ディテールの強化』機能を使うと、ピクセル単位で限界まで色の分離を再現し、表現として情報量に変えます。なので、ファイル容量はかなり増えますが、その分例えば各チャンネル含め細かい描画再現のデータを作ります。
上の画像はピクセルが見えるところまで拡大したものですが、岩肌の色に手前の草木の緑が食われ偽色だけでなく、全体が赤っぽくなっていたものが、より正確な色分離になったことがわかります。
手元にあるいつもの作例のスーツのモアレ処理でも最大限の効果が発揮されました。
使い所としては、もちろん常に使っていただいても良いですし、大きな出力のために大きな画像が必要な場合は、ベースになるピクセル単位の色分離はとても重要になります。なので大きな出力の際は是非活用するべきだと思います。
また、トリミングによる一部分の画像を使用する際も同様にピクセル単位の描画が後処理で有効になります。
ファイル容量は大きくかさばりますが、とても良い機能がつきました。
さらに細かく良い画像が作れますね。
この機能はAppleのCore MLとMicrosoftのWindows MLが必要であるため、古いオペレーティングシステムでは機能しません。必ずmacOS 10.13またはWin 10(1809)以降にアップデートしてください。
『ディテールの強化』は集中的な処理を必要とし、作業にはしばらく時間がかかります。より速いGPUはより速い結果を意味します。 eGPU(外部GPU)は大きな違いを生む可能性があります。
古いMacや対応外のグラボ、スペックの低いマシンでは使えない場合もあるかも知れません。
対応外のフォーマットは以下になります。
Non-raw files such as a JPEGs, TIFFs, and HEICs
Linear DNGs (including HDR and pano DNG images previously created inside Lightroom and Camera Raw)
DNG proxies and Smart Previews
Monochrome raw files (such as Leica M MONOCHROM)
Four-color cameras
Foveon sensor images
Fujifilm cameras with SR, EXR, or 2x4 mosaic sensors.
Canon S-RAW/M-RAW files
Nikon small raw files
Pentax Pixel Shift Resolution (PSR) files
Sony ARQ files
また今回の機能は、デジタル業界で偏ってしまっているRAWが生だとか、コントラストやシャープネス、解像とは何かを考える上でも非常に面白く良い機能だと思います。