ColorNavigator 7の使い方 ②基本的な操作手順 *2021.2.19改訂 |
2021.2.19
『ColorNavigator 7』になってから2年を超え、もちろん分かってはいたのですが、UIなどいくつかの仕様、配置などに変更が出ていました。..(^▽^;)..
そのうち書き直さなければ、、と思いながら時間が経ってしまいましたが、未だちょくちょく閲覧されているので、流石に申し訳なくなりました。Σ(|||▽||| )
がっつりと現状版に改訂致します。
加筆修正も大幅に行いましたので、以前ご覧になって「違うじゃん」と思った方は、是非再確認してみて下さい。
ColorNavigator 7を使った標準のキャリブレーション手順を書いておきます。
大変長くなります。興味のある方は確認も含めてご覧ください。
まだキャリブレーションに慣れていない方、久しぶりで忘れてしまった方は順に書いていますのでご覧くださいませ。
『ColorNavigator 7』でキャリブレーションするためにはAdvanced Mod(AVD)として、従来通りデフォルト(設定値)で用意されている各種初期設定を使うか、手動で目的の設定を行います。加えて今回はStandard Mode(STD)で、それぞれの色空間を目標値としてすぐに切り替えられるように複数のカラーモードが用意されました。
*CAL1~3をStandard Mode(STD)に変更することも出来ます。詳しくは一つ前の記事をご覧くださいませ。
慣れるしかありませんが、UIの変更でキャリブレーションの手順のところが少し分かりにくくなりましたので、一応書いておきます。
◎以前からある初期設定(プリセット)でのキャリブレーション
ColorNavigator 7を起動します。
①のCALを選択します。中央の目標蘭からすでに任意で作成している目標値かデフォルトで用意されているもの、もしくは新たに目標値を作成します。
②すでにColorNavigator 6でキャリブレーションされている方は、中央にとりあえず何らかの調整名が表示されると思いますが、調整値を自分で設定出来ない方のために、いくつかのデフォルトが用意されています。その欄のプルダウン表示の一番下から順に「商業印刷」「印刷5000K」「印刷5500K」「sRGB_00000001」とあります。
③デフォルトの設定値
・商業印刷は、「輝度:120cd、白色点:5000K、調整方法:グレイバランス重視」
・印刷5000Kは、「輝度:100cd、白色点:5000K、調整方法:標準」
・印刷5500Kは、「輝度:100cd、白色点:5500K、調整方法:標準」
・『sRGB_00000001』は、「輝度:120cd、白色点:D65、調整方法:標準、色域:sRGB」
となっています。
初期設定の表示で運用する場合は、上記のデフォルト値を選択して、キャリブレーションを開始します。
もし、目的の設定がない場合は『目標の設定』から「新規作成. ..」を選択して『目標名およびその設定値」作成します。
*広告印刷の基準は長らく「5000K、80cd、ガンマ2.2」とされてきました。が、ここ数年はEIZOでも『100cd』を推奨としています。
もとより輝度に関する基準は、紙や環境光との関係や他にもいろいろと考え方があり、通常は80cd~120cdで設定します。
現在は雑誌・広告だけでなく、商業印刷としても業界個々に人や機械その他もろもろの有り様でかなりバラつきが出ており、一概に基準値が固定されなくなってきた状況もあります。とりあえず現時点では商業印刷としては、「80cd~100cd」、プリント印刷は「100cd~120cd」、総じて「100cd」前後と行った感じになっています。
明確な基準がなければ人によっては悩む(迷う)人もいるかも知れませんが、どうしても一つに決めたいのであれば100cdでどうでしょう。
④「キャリブレーション..」を押して指示通りにキャリブレーションをします。
◎任意で目標値を決めてキャリブレーション。(同:CN6の調整目標作成..)
新規で、個別の目標値を設定する場合は従来より手順が分かりにくくなりました。なので順番に書いて行きます。
まず、スタート画面の中央の目標名の右すぐ下にある[目標の設定]のプルダウンにある[新規作成...]を選択します。
新たにダイアログが表示されます。
「モニターの色の合わせ方を選択します。」で、初期設定になっている『◉手動で目標を設定する』のまま、右下にある『>』を押して次の画面に進みます。
さらに新たな調整ダイアログが立ち上がります。
まずは、目標名を入力します。目標値は一度作成すると、繰り返し使用するので、目的に合わせて複数の設定値を作ると良いでしょう。印刷(Adobe)やWEB(sRGB)、WEB(DisplayP3)など。
名前は好きに付けて構いませんが、プロファイルの中身の設定が分かるようにした方がいいと思います。
目標名を決定したら、それぞれの項目を任意で指定していきます。その際にもデフォルトで作成されている各基準値をベースにしたい場合は、目標名の下の『プリセット目標』プルダウンから任意で選びます。以降の各種項目が初期設定からプリセット値に変わるのですが、結局は手動で決めていくのであまり必要はありません。
基本的には手動で各項目を設定していくのであまり必要ではありませんが。
では、輝度から順に設定していきます。
目的がない限り、デフォルトのスライダーによる選択で構いません。初期設定は上記でも書いたように『デフォルト80cd』になっています。任意で輝度値を設定して下さい。
次に黒レベル
こちらもデフォルトの「最小値」のままでいいです。
白色点
白色点の値も昔から一定の基準と考え方で設定します。
インクジェットでの出力の場合は、紙白を計測したり、ソフトウエアを利用したり、通常は5000K~6000Kの間で設定して、そこから視覚的に微調整を行って合わせ込んだりします。
一般的な仕様は以下になります。印刷などはルールに則って行うものでもありますので業務で運用する場合は基準に従った方が良いかも知れません。
・印刷:5000K
・WEB:6500K
・WEB(デバイス):7000K〜7400K(iPhone, iPad,AndroidなどDisplay P3)
ガンマ
こちらもよほどの目的がない限り2.2のままで良いです。
調整方法
デフォルトの[標準]のままで大丈夫です。
コントラスト重視は無くなりました。
最後に色域を指定します。
通常は「Native」ままで良いです。
印刷はAdobeRGBでの運用なのだから、調整ベースの色域はAdobeRGBを指定する方がいいと言う方もいらっしゃいます。
どちらでも構いませんが、印刷のAdobeRGBに対してColorEdgeのネイティブの色域はほぼ同じ大きさか、最近のものは少し大きいです。ただ僅かに回転が違います。ColorEdgeの色再現の中で、AdobeRGBを再現できない部分はあります。しかし逆もあるので、調整ベースの色域をAdobeRGBに指定すると、本来モニター側で再現できる範囲も削ります。基本的には「Native」のままで良いと思います。
一方、sRGBの場合は違います。
sRGBの色域は、AdobeRGBモニターに対してあきらかに小さいので、正確に色再現を行うためにはベースになる色域にはsRGBを指定します。
ICCプロファイルポリシー
こちらはデフォルトのままで大丈夫です。ただ、同じ調整目標でキャリブレーションをするたびにプロファイルは上書きされていきますので、目的があれば変更します。
以上で調整項目の設定は終了です。問題がなければ、右下の『OK』をクリックします。
作成した目標名とそれに合わせた調整目標値が表示されます。
問題がなければ、右下の完了を押して終了です。
これで、目標値は完成です。
お疲れ様です。これで『CAL 1』に目標値が一つ出来ました。
この目標値に対してキャリブレーションを開始します。
「キャリブレーション」を押すと、キャリブレーションダイアログに変わります。
まずは「測定器」を選択します。CGシリーズの場合は内蔵のセンサーも表示されます。
今回はi1 Display Proで行います。
*この時点で下図のようなアラートが出た場合、
センサーやColorEdgeのUSB接続コードが繋がっていないか、以外に多いのが、MacBookProなどとの接続の場合、MacBookPro用に入れているi1Profiler(i1専用のキャリブレーションソフト)が常駐監視として起動している場合です。
メニューバーからi1Profilerを終了すると正常に動作します。ColorNavigatorを再起動する必要はありません。
センサーをセットして、右下のダイアログから「実行」を押してスタートします。
ほとんど時間はかからず、数分でキャリブレーションは終了します。
ここからが大事なポイントで、ColorEdgeならではの機能になります。
結果欄を見て、誤差は必ず出ますが大きな問題がなければ終了ですが。。
ただColorEdgeシリーズの方はここで終わらず、下図のダイアログ内下側にある[検証を開始する]にチェックを入れて検証を行いましょう。
*モニター検証はAdvanced Modeのみで実行できます。
検証はキャリブレーションして出来上がったプロファイル、つまり実際の表示の色数値とその目標に定めた本来あるべき色数値との誤差をΔEで表示してくれます。
この確認機能がColorEdgeの最大の特徴です。
ダイアログ中央下にある[検証を開始する]にチェック入れて右下の完了ボタンを押すと、検証ダイアログに変わります。
検証ダイアログでは、検証タイプは「RGB」、検証目標は環境設定で指定した「RGB簡易」になっていると思いますが、もしも「ISO 12646 Profile Quality」になっていれば、プルダウンから『RGB簡易』に変更して下さい。これは前回の記事で書きました。
デジタル画像処理が前提のキャリブレーションですので、モニター表示との差異を確認します。ISO 12646 Profile Qualityは使用しません。
右下の「>」を押して検証画面に移動します。
キャリブレーション同様にセンサーをセットして「>」を押して、画面右下から実行を押します。
検証が終了したら、画面中央にある『詳細』を押して32パッチのカラーの色差を確認します。
*検証とは
通常(他社)は、キャリブレーションを終了すればそれで終わりです。その前提はPC、モニター、センサー、ソフトに何の不具合もなく、機器や仕組みを信用しての考え方です。『キャリブレーションすれば、それで大丈夫。正しい色』と後は信じるだけです。
しかし、機器はあくまでデバイス(物体)で経年劣化もしますし、ソフトもバグがないとは限りません。何よりキャリブレーションは、実は「センサー」に大きく依存します。本来センサー(とくにフィルター式)はカメラ・レンズ以上に湿度に弱いです。保管状態の悪いセンサーはフィルター等の劣化が心配です。
ColorNavigatorは目標値に対してキャリブレーションで出来上がった『プロファイル』が、本当に正しいのか、正確に表示できているのかを自己判定する機能を備えています。
これが、何より必須の作業で、他のメーカーにない優秀な確認機能になります。
ΔEab(もしくはΔE2000)で、その差異を確認します。
数値は、目標値に対して、測定値(出来上がったプロファイル)との誤差が少なければ少ないほど良いのですが、その差「0.00」はありえません。デジタルで多い誤解の一つですが、デジタルそのものは確かに情報数値と式、プログラムですが、カメラやモニターは機器(物体)です。その差「0.00」は神様以外あり得ません。新品であっても誤差は必ず出ます。モニターを構成しているものは物体で生物ですので。
人の目による視覚的な差異としての基準は、ΔE1とされていますが、EIZOは「ΔEab3.99」までは情報値の色と目に見える色の差は許容値としています。なので、代表的な32パッチの計測ですが、とくに赤系などは劣化しやすく、長年使っていると「4.00」を越してくる可能性は多くあります。
黒に関してはそこまで気にしなくて構いません。極論、黒はそもそも光っていませんので。
もしもΔEabが10を越していると確実にそのパッチの色・周辺の色は正確に表示されていませんし、階調を失っています。
残念ながら当然の仕組み上、特定の色のパッチの差異がダメになったとしても修理は出来ません。買い替え時と諦めどきの判断としての検証結果になります。まぁよほど悪環境、長年の使用でなければColorEdgeは大丈夫です。
僕個人はこの機能を必ず使ってもらいたいとセミナーでは必ず話します。
「目に見えないシステムの話」と「劣化が伴う物体」の絡みでデジタルは存在します。お金をかけたから大丈夫と言うものではありません。
キャリブレーションさえすれば大丈夫などと言う安易な考え方では正しい色と向き合えません。
この検証機能があることで、どこに不具合が出ているかを確認することが出来ます。
誤差大きいときは、以下の4つの原因が考えられます。
1.モニター起動後すぐのキャリブレーション
・20分~モニターを表示エージングさせましょう。
2.センサーの不具合
・他の測定器があれば試して確認すると結果がわかります。
3.モニターの劣化
・何度キャリブレーションしてもパッチの誤差が大きい場合はそのパッチに関わる色は正しく再現出来ません。修理は出来ないので買い替えの検討になります。
4.モニター、PC、測定器などの各種接続コードの不具合やソフトウエアの不具合
・何かしら再接続や再起動して再調整します。
問題がなければキャリブレーションを終了します。お疲れ様でした。(;^_^A アセアセ・・・
・・・・・・・
年数が経っているとモニターの劣化も激しくなってきます。月一ではなく、機体によっては2週に一度など少し早めにキャリブレーションすると良いと思います。
ちなみに経験上、業務用であれ、安価なモニター、iMacやMacBokProなどのモニターも劣化度はかなり激しいです。そもそもモニター付きのPCで、モニター部の部材にお金がかかっているわけがない。写真館など毎日フルにiMacを使い続けている現場では、およそ2年前後でiMacのモニターはかなり劣化し、2週に一度のキャリブレーションでも足りなくなります。またそもそものコントラストの問題や何よりソフトキャリブレーションでは「ハードキャリブレーション」との差が埋まることはあり得ません。
今だにソフトとハードの違いを正確に理解していないユーザーが多いのは残念ですね。
モニターに一番に求めるものは、デジタル数値としての色とモニター表示の色の差が少ないことです。当たり前ですが、機械任せ・ソフト任せだけで済ますメーカーのものはそれが正しい結果になっているのかも分かりません。正しい色を見ることが出来なければ、色温度をもう少し暖かくの調整作業の意味がありません。
また昨今は業界のユーザーもとかく流行り物に流れる傾向が強いですが、他社の人気モニターはスイッチ一つでsRGB表示などと謳ってますが、ハードキャリブレーションモニターにあるまじき、根っこのプロファイル変更は行わずに、表面表示だけを変更すると言うとても危険な行いを平然と売りにします。プロは流行りや広告に惑わされることなく、デジタルを根っこから正しく理解して、正確に扱える機材を使う方が良いと思っています。