Appleから始まる新しいカラースペース『Display P3』と再構築されたカラーマネジメント新時代。Lr Mobileなどアプリとの連携。 |
2019.7.8
Androidの時期OS 10の話が出てきましたね。
Androidは次のバージョンからカメラの画像データのカラースペースはDisplay P3に対応するようです。
いよいよ、スマホを中心としたWEBの世界はsRGBではなく、Display P3ですかね。
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Appleから始まる新しいカラースペース『P3カラー(Display P3)』は標準プロファイルになり得るか。
新時代『Apple Wide Color Sharing Profile』とは?
仰々しいタイトルになったけど、、(;^_^A アセアセ・・・
本当は昨年末(2016年末)には書きたかった事。
Appleデバイスの『ワイドカラー』や『P3カラー』、『とくに赤系の色彩が広がった』などと言うキーワード以外ではあまり話題に上がらない、カラーマネジメントを含めたAppleの動きに関して、感想を書きます。
これはiPhone7や最新のMacBookProの発表で「デジタル映画業界の色域」や「sRGBより25%広い色域」とAppleが広色域を謳っていたことでも知られていますが、WWDC2016でも話題になりました。
2015年のiMacやiPadProを皮切りに昨年末までのApple製品のアップグレードやOSのバージョンアップで、広色域と色管理の新たな仕組みで一通りのゴールを見ました。
単純にディスプレイの色彩(見え方)が広くなったと言うだけではないですね。
昨年はなんやかんや忙しかったのと、今年も仕事と休みの合間にちょこちょこ書いたので、ずいぶん時間が経ってしまいました。(-。-;)
僕もものすごく詳しくは書けませんので、結果を見ながら出来るだけ簡単に書きます。。とは言え結局また長くなったけど。。
どの順番で書こうか迷いながら書きますので、相変わらず読みにくいのはご了承ください。(^▽^;)
新しいカラースペースをどのように使うか・・・です。興味ある方はご覧ください。
「P3カラー」とは新たに定義・運用されることになった『Display P3』カラースペース。
WWDC2016でAppleが発表していたのは、Appleデバイスを中心にした新たなカラースペースとカラーマネジメントの再構築。
まず、結論側から見ましょう。
“今後のAppleデバイス(デバイス間で)を使い、WEBやアプリで「デジタル画像を運用、閲覧すること」に際し、もはや『sRGB』と言うカラースペースは使わなくても(気にしなくても)いいですよ、Display P3で『より広い色域の中でデジタル画像を楽しみましょう』と言うこと。”
Appleが新たに推奨するカラースペース『Display P3』カラースペース。
前回iPhone7の色域で書きましたが、あらためて見てみましょう。
まずColorNavigatorで計測した結果ではiPhone7本体のディスプレイの色域はAdobeRGB並みの広さがあります。
分かりにくいかもしれませんが、白い部分のエリアが「iPhone7」の色域で、色のついた部分が「AdobeRGB」です。(逆だとより分かりにくいので)
世間の言うワイドカラーが実際に何を指すのか分かりませんが、Appleが新たに定義した色空間が『Display P3』カラースペース。
iPhone7自体の色域と比べるとこんな感じ。
白い部分のエリアが「iPhone7」で、色のついた部分が「Display P3」です。
P3についても簡単に触れておきます。『Display P3』は「DCI-P3」と言われていますが、あくまでベースです。
*「DCI」はデジタルシネマの世界でハリウッドの映画スタジオが中心に作成している規格ですが、統一されているわけではなく、標準化をを行うための規格とされているそうです。
”Digital Cinema Initiatives”と言う組織で作成され、規格はDCIが行っていますが、標準化作業は”SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)が行っています。
*sRGBはITU-R BT.709(デジタルテレビの規格)をベースに標準化され定義されていると言われています。
DCI-P3の規格としては、細かくいろいろと決まりごともあります。
色表現方法はRGB入力ではなく、CIE1931色座標のXYZで使用され、ガンマは2.6、駆動ビット数12ビット、白色点は6300K、輝度は48cdm2(14ft-L)を満たしていること、、などなど。。
SMPTE Display P3はそれをベースにICC規格に準じカラースペースとして作られます。ガンマは2.2、白色点は6500K。
話は逸れますが、さらなる色の拡大に関しては「ProPhoto RGB」には及びませんが、より可視領域に近く広い色空間の次世代テレビ規格『ITU-R BT.2020』もあります。この広い色域を表示するためにはLEDでは限界で、レーザーディスプレイによる各社の研究開発が進んでいますし、高価ですが、すでに2020をカバーしているレーザーディスプレイも出ています。ただこちらはまだまだ問題点などもまだ出ているようですが、この先、さらに広い色空間のテレビやディスプレイも登場するのでしょうね。画像処理もより正確に色を認識しながらできますね。
しかし、こうなってくると、表示を見るだけでなく、出力側にももっと頑張ってもらいたいですよね。
話戻って、、なので『Display P3』は「sRGB」に比べておよそ25%広い色空間と言われますが、比べるとこんな感じ。
Display P3はほぼ完全にsRGBを内包しており、新たなカラーマネジメントコアでは拡張範囲sRGBを採用します。
そもそも簡単に言えば、未だWEBの世界は「sRGB」で運用することがベストになっています。カラマネしていないWEBツールや画像閲覧アプリ、SNSではsRGB以外の広い色空間のタグでは正しく表示されません。
なのでWEBツールとしては一般的にはsRGBプロファイルの運用をしていれば無難に色の伝達が行えると言うことです。色の再現幅はともかくです。(一部、タグなしになる場合やディスプレイのカラーになる場合などは置いといて…)
で、最初に書いた今回のテーマになるわけですが、表示だけ広くても意味はない。当然ながらその色空間の画像との連携・運用ができて、初めて世界が広がります。
Display P3と言うと仰々しく聞こえるけど、今現在カメラの中で撮影するときに指定するカラースペースは『sRGB』か『AdobeRGB』のどちらかで、目的に合わせて選択します。
iPhone7のカメラはそのどちらでもなくて、『Display P3』と言うカラースペースを使用します。イメージとしてはカメラのメニューの中の選択肢に『Display P3』もあると考えれば、もっとイメージしやすいかな?
iPhoneやiPadで撮影してそのままWEBやSNSにあげる場合はあまり目に触れないので実感が湧かないですよね。埋め込まれているカラースペースは「Display P3」です。Photoshopで処理する場合にはアラートが出ますので、よくわかります。
iPhone7のカメラで撮るとデータの色は『Display P3』。もちろんアプリのカメラ、Lr MobileやProCameraなどでJPEG撮影しても同様です。
つまり広告でも言われている「sRGB」の外側にある色をより広く記録し、表示できると言うことですが、僕らの業界で言えば、すでにモニターはAdobeRGBで、撮影・処理で画像データもAdobeRGBですよね。
それに対してApple版はAdobeRGBではなく、『Display P3』で運用と言うことです。
さらに、iPhone7からは一部専用アプリ(Lr MobileやProCameraなど)でDNGによるRAW撮影も可能になりました。
CameraRawやLightroomでDNGデータを現像する場合ですが、そもそも『目的に合わせてカラースペースを選択』するのですが、現在はApple仕様の『Display P3』が作業用標準プロファイル選択エリアに入っています。
とくにAppleデバイスを中心に考えたWEB・アプリコンテンツ運用のデータの場合はsRGBではなく、『Display P3』で画像データを作ることが標準になります。
Appleの推奨は、
・RGB作業スペースは「Display P3」
・カラーチャンネルモード16ビット
・画像を正確にプレビューするには2105年後半のiMac以降のデバイス
・「Display P3」ICCプロファイルが埋め込まれた16ビットPNGファイルとしてイメージアセットをエクスポート
そしてもう一つ、何より大きく変わったのがカラーマネジメントコアの部分。
こちらは当然ながら僕も詳しくは書けないのでおおまかな書き方になりますが、大枠が伝わればいいかな。(;^_^A アセアセ・・・
iOS9.3でひっそりとOSがカラーマネジメントしたことは以前に書きましたが、従来のMacOSのようにただカラーマネジメントしただけではなく、iOS10とmacOS Sierraではカラーマネジメントコアの部分で大きく進化しました。
まずiOS10とmacOS Sierraは、Core GraphicsやCore Image、Metalなどのフレームワークを含めて、拡張された範囲のピクセルフォーマットと広域色空間でのシステム全体のサポートを強化しました。
そもそも90年代にICCがPCハードウェア上で色を扱うための標準プロファイルsRGBを作成し、推進されてきました。AppleのICCでの作業はColorSyncに含まれており、OS Xのコアに組み込まれています。
Win XP終焉頃にAdobeRGBモニタの普及によりデバイス間の連携も「sRGBのみ」でのワークフローではもはやダメだというトラブルがありましたが、今回のAppleはただワイドカラーと言う色域を広げただけではなく、既存のデバイスやWEBアプリやソフトで未対応のものに対する処理も考えました。
Appleの推奨する次世代ワークフローは、今後さらにモバイルプラットフォームに移行すると考えます。そのための手段としてワイドカラーディスプレイだけではなく、各デバイスを出荷時に工場で較正し、デバイス間のカラー表示が正確で一貫性があることに注力しました。そして何より大切なカラーマネジメントとして『iOS10とmacOS Sierra』に組み込んだ完全なシステム全体のカラー管理を作りました。
この新しい「iOS 10」のシステム全体のカラーマネジメントは広域色空間だけではなく、既存のデバイスやソフトなどsRGBのために構築された部分に対する対応も考慮しなければなりません。
そのためにAppleは『iOS 10(及びmacOS Sierra)』に拡張範囲sRGBカラースペース(Extended Range sRGB Color Space)を追加しました。
Extended Range sRGB Color SpaceのプロパティはsRGBプライマリの全てを持っています。ガンマは2.2、照明条件はD65。既存のアプリでsRGBを表示できるだけでなく、同じアンカーポイントを維持しながらワイドカラーの色を表すことができるとされています。
またMailやiMessageで共有されたワイドガマット画像は、iOS 10によってApple Wide Color Sharing Profileに変換されます。このカラープロファイルは、画像ファイルを表示したデバイスに応じて適切な色空間に変換されます。
つまりもっと簡単に、単純に理解するのであれば、、
Appleデバイス「iOS 10」で基準になる色空間は広色域の『Display P3』ですが、その画像をワイドカラーに対応していないデバイスや、WEB・アプリなどでは『iOS 10』によって『自動的にsRGBに変換される』と言うことです。
実際の仕様としては、
iPhone7で写真を撮影すると[Display P3]JPEGが作られます。
専用アプリでRAW撮影した場合。
Lr MobileやProCameraでRAW撮影し、同アプリで現像(画像処理)を行ない保存した場合に埋め込まれるタグは『Apple Wide Color Sharing Profile』プロファイルになります。
『Apple Wide Color Sharing Profile』プロファイルはワイドカラー未対応のデバイスやアプリなどではsRGBに変わります。
写真アプリにある画像データをメールで送ると、画像データのタグは[Display P3]から自動的に『sRGB』に変わります。
昨年にiOSのインスタグラムはワイドカラーに対応されたと言う記事を見ました。カメラアプリやSNS系などまだ未対応なものもたくさんありますが、ワイドカラーに対応していないデバイスやOS、WEBアプリやソフトではDisplay P3画像データがiOSで内包されているsRGBで表示されます。
画像データをデバイスやアプリに合わせて、ワイドカラーやsRGBに変更すると言うのが特徴です。凄いですよね。
この新たなカラーマネジメントシステムはとても素晴らしいと感じましたが、Win系やAndroid系がAppleのこの仕組みに乗っかるとさらに良いのですが、、どうかな?
それはともかく、Appleデバイスを中心に考えれば今後のWEB使用のためのカラースペースは『Display P3』で行きましょう!と言うことですね。
ただし!・・・・
いくら「出荷時に工場で較正し、デバイス間のカラー表示が正確で一貫性を」と言っても、キャリブレーション出来るわけではありません。多くのデバイスを利用する一般の方はとくにその部分に対する認識はありません。
最近のデバイスはブルーライトカット(青み軽減)など色味を変更できる機能やアプリもありますが、これはキャリブレーションではありません。極端に言えばディスプレイの表面に薄いアンバーフィルターかけるのと変わりないので、色味を変えた状態でデバイス間の運用を、、と考えるのは一貫性からはズレますので注意しましょう。出力物と合わせた業界のカラマネとは違う話で考えなければいけません。
WEB使用でのデスクトップでの画像処理に際してはモニターの表示ベースはDisplay P3、白色点6500K~7200Kでのキャリブレーションしたもので行うのがベストになってくると思います。
それと、、ついでに。。
Lr3兄弟の作業カラーフローは現在も一貫性がありませんので、こちらも一応注意しましょう。
「LightroomCC」や「Lr Mobile」のプレビュー表示や作業領域(ヒストグラム)はProPhotoRGBでの表示です。Display P3のヒストグラムとは形が違います。モニターやデバイスの色空間より広いので、必ずしも正しく表示されません。
「Lr Web」は名前通り、sRGBの作業フローでプレビュー表示もsRGBです。こちらも彩度の強い画像は正しく表示されませんので、やはり正しくは調整できません。
iPhone7やiPadProは本体ワイドカラー(AdobeRGB並みの色域)でDisplay P3での運用ですので、場合によっては色が正しく扱えない画像もあるかもです。
これを機に、「Lr Mobile」や「Lr Web」はDisplay P3でのプレビュー表示や作業領域(ヒストグラム)にする方が一貫性があると思うのですがね。
さらにこの先、印刷やプリントなどの出力物に対して、業界としてAdobeRGBだけでなく、『Display P3』も推奨していくのかどうかは分かりませんが、とりあえずとくに気にせず、『Display P3』TIFFやJPEGで納品する人も出てきそうですね。