ACR9とLr6と事務所の外は工事 |
小さな事務所はPCの数も多くモニターも多い。連日デザイナーも作業しており、それらのせいか室内はお昼前にはかなりの熱気が漂う。
玄関から入ってすぐの西側に面した壁には大きな窓が一つ。一番奥の僕のデスクの左側には小さめの窓があるが、隣が小さな公園?のような空間になっていて視界が開けており、西日が強く入るので基本的には黒で塞いで閉め切りにしているが、あまりの暑さに窓を開ける。反対の東側にある窓も開けると、風通りはかなり良く、さっきまでの熱気がさ〜っと抜けていき涼しい風が室内に入り込む。いつもは微かな風の音、時折走る車の音がするくらいで割合静かな場所に事務所があるのだけれど、今月に入って玄関前の大学通りをガス菅の取り換え工事が始まった。車も通れないほどの大ががりな工事で人やバスもすぐには通れないので、しょっちゅう警備員が大声を張り上げて何かしら指示を出している。地面をほじくり返すので、デスクに座っていても地面が揺れている。
撮影以外は常に画像処理に追われていて、止む無く泊り込むことも多いが、日中は中々捗らない。まぁとりあえず急ぎ分は終えたので、気持ちは少し落ち着いた。コーヒーでも飲もうかとセットしたところで、インターホンがなった。
久々の友人が近くに来たから遊びによったと差し入れ持って現れた。
「仕事はどう?」
と聞くので、
「今とりあえずひと段落したとこ」
と答え、コーヒー飲む?と聞いて自分用に入れたものを渡した。
先週までは天気も悪い日が続いたけど、やっと少し暖かくなったと思ったら今度は一気に暑くなった。
「しかし暑いよね」
と大きめの声で、汗を拭いながらコーヒーをすすっている。
外では工事の音がけたたましく、自然と声が大きめになった。
仕方がないので窓を少し開ける程度に締めて互いの近況を語る。と言っても不景気な昨今、とくに面白い話もあまりないようで会話はそんなに弾まない。新型カメラやレンズの話題もあるけど、購入しない出来ないのであれば話もそこまで膨らまない。
「ブログは書かないの?」
と聞いてくるので、書きたいことはわりとあるんだけど、時期が過ぎると今更だったり、テンション下がったり、何より今年は今現在まで結局バタバタしていて書く時間がないんだと答えた。
「まぁいつも言うけど、お前のブログ読んでいる人なんかいないだろう?」
皮肉った顔で嫌味ったらしく言うので、まあね。と答える。そう言われることも多い。
実際ほとんど知られてないから見る人も少ないだろう。
でも、外であまり他人と触れ合う機会は少ないけど、セミナー関係で話しかけられ方には意外にブログを見て参考になったとか、ColorEdgeを購入したとか言われることもあるので、数少ないその出会いの確率から言っても割合見られているらしいと感じたこともある。
自分のセミナーは当然見ず知らずの方からブログを見て連絡をくれるしね。
最近は意に反して?もしかするとラジコンヘリ関係で見られている数が増えているのかも知れない。しかしこちらはベテランでもないし、専門でもないので、正直に言えば自分でも微妙。これ以上は書かない方がいいのかもと思っている。
ひとしきり話したところで、並んでいるモニターやプリンターを見た後、しかし相変わらず狭いなと言うので、すまんねと返した。
僕の事務所はシェア事務所で現在は4名。
もう一人カメラマンとフリーのデザイナー。
京都が本社の編プロの東京支社としてデスクがある。
そう言えば地下が空いたんだよねと僕が言うと、借りたらとのってきた。地下はうちより広くて電気以外は何もない。撮影やセミナーには十分で「いっそ借りきる?」とデザイナーとも冗談で話しもしたけれど、現実は厳しい。
シェアでカメラマンやデザイナーなどもう3人くらい入ったら地下も借りるんだけどね。
メリットってなんだろ?仕事を分け合えるなんてないけど、カラマネ関係は大丈夫。モニターもいっぱい。プリンターはPro1もある。困ったことがあればデザイナーもいるし、もう一人のカメラマンは英語中国語も堪能。画像処理なら僕も助けられる。そんなところ?
「お前こいよ」と言うと、
「そんなお金ないよ」と即座に断られた。
募集でもしようかと考えてもみたけど、合わない人だと困るしね。とりあえずは様子見の状態だね。
少し沈黙したあと、友人が思い出したように言う。
「そう言えば、Lightroomが新しいの出たよね。CameraRawも?」
とお菓子を口に入れながら聞いてきた。
「やっと出たね。ライトルーマーは待ち焦がれたろうね」
実際にLightroomはここ暫くアップデートされておらず、この一年でCameraRawの調整機能の方がかなり多かった。以前よりシステムの問題も感じていたが、今のままではCameraRawと同じに出来ない部分もあった気がしていた。一部のライトルーマーからは悔しいと愚痴を聞くこともあった。
「今頃はかなり盛り上げってるんじゃない?」
僕もお菓子を食べながら答える。
「新機能も付いたんでしょ?」
と興味深々で聞いてくるので、もののついでの一番はこっちかと察した。
「メジャーアップデートだしね。いくつか新機能もついたよ。CameraRawも一緒」
苦笑いで手早く答えたつもりだけど、今度は話が終わる気配はないようだ。教えてよと言うかわりにモニターに目線をやる。
仕方がないので、CamerRaw9とLightroomCCを立ち上げる。調整部分で新機能として新たに付いたのはHDRとパノラマ合成。
CameraRawのフィルムストリップのところは使用が変わったので、若干違和感を感じる。まぁすぐになれるだろうけど。
PhotoshopCCになってから一番感動したのはHDR機能の強化。これは仕事ではかなり便利で、仕組みには多少不満な使用部分もあるけど以前はセミナーでよく話した。もちろん同業者や写真家の方は必要と感じる人も多く、セミナー後にCCを契約した人も多かった。
ここのところも書きたいと思っていたのに時間だけが過ぎた。
Photoshop系の新機能は当然ながら新たに開発されたものは以前のものより精度、便利さが格段に上がる。HDRも「プロ統合」の仕組みからさらに簡潔に動かせるようにした感じで、第一印象はかなり良いと思った。パノラマもPhotoshopよりも自動の精度が上がっていると感じた。もちろん両方とも仕事の合間にほんの少し試しただけなので正確な動きまでは確認に至っていない。
「LightroomはCameraRAWに追いついたの?」
と聞いてくるので、現像モジュールの部分ね。やっと全て追いついたようだよ。と答えた。歯がゆい思いで地団駄踏んでいる人もいたので、さぞ小躍りしていることだろう。
「コバが、昔さんざん言っていた問題はどうなったの?最近聞かないけど」
「Lightroomの話しは最近あまりしてないじゃん」
楽しそうに聞いてくるから意地が悪い。
確かに去年くらいから若手やどっかの催しで誰かと会話をしたときに、
「小林さんは[Lightroom]ってソフトを知らないんですか?CameraRawより性能いいんですよ!」
と何故かよく言われた。
内心は大爆笑で、心の中では「知っとるわい!誰に言うとんねん!」とその度に叫んでいる。
というか、その発言の事態で逆にお前はCameraRawもLightroomも知らないな。と心の中で突っ込む。
そう話すと友人も大爆笑した。
「Lightroom4からソフト校正と言う形で対応してきたので、一部分を除いて面倒くささは解消されたから外ではあまり言わないようにしている」
と言うか、ライトルーマーが圧倒的に増えたので面倒くさいのもある。
随分昔、最初の頃はネットの書き込みでも色がおかしいや合わないと言ったアマチュア中心の発言も多く、トンチンカンな回答でも盛り上がっていたのだが、ここ数年はソフト校正のおかげや『ProPhotoRGB』と言うキーワードも理解されてかどうかはともかく増えてきたので、ユーザーの迷いも減っているのだろうと感じている。
もちろんセミナーなどで会う若手ユーザーは全く知らない理解していない人もまだかなり多いけどね。
見えている画像しか興味無い方も多く、自分が問題ないと思えば問題ないんだから煩く言うなよと言われる事の方が多い。
しかし仕事の場合はそうはいかないことも多いので問題にぶち当たると相談の連絡があるが、処理の問題やカラマネ問題、現実は実に初歩的な認識ミスも多い。
「その解消した辺り、もう一度話してよ」
「あれ以来、ブログでは書かなかったよね?」
と真剣な顔になって聞いてくるので、説明するの?と目で聞き返した。
いろんな事があって書くタイミングを完全に逸したのと、何かそれについてはもうどうでもいいやと言う気分になっていたのもあった。
「一部を除いてってのはどの部分?」
と、さらにせかすように聞いてくるので仕方なく説明することにした。
CameraRawには[ワークフローダイアログ]ってのがあって、目的に合わせる為の作業領域、範囲を指定する部分があるよね。
友人はコーヒーを飲みながら頷く。
Lightroomにはワークフローダイアログがない。そのためプレビュー、ヒストグラムや警告、調整スライダー色チャンネルクリッピング表示が常に[ProPhotoRGB]で表示されていた。
4になってソフト校正と言う仕組みを追加した際にちょうど良くsRGBやAdobeRGBの確認表示も出来るようにした。
「3までのCameraRawとの違いはこんな感じ」
友人は思い出したように言う。一番はプレビューが最大限に表示されていたことでもあるけどね。だから違和感があった。
「プリント再現域もそうだけど、デバイスにはそれぞれ固有の再現域があるし、ユーザーは良いも悪いも見えているからあきらめを含めて調整が出来ることがやはり正しい運用につながると。正しく見えていない色を操作する等人間業ではないだろうし。そもそもデジタルは計算、プログラミング?で決められた動きを行う。色情報値AがあるからA’になる。何も決まっていない値点の物をB’には出来ない。情報値の世界では広い空間が有った方が作業領域が広がるのは当然で、より正しく色が運用出来るようになる」と言う感じだっけ?
PhotoshopやC1もベースになっているものはCIE L*a*b*で白色点はD50。カラースペースはProPhotoRGBで動いてるよ。ベースはLightroomともちろん同じ。
「ちなみに白色点はD65であるべきと未だそれに固執する方がいるけれど、デバイスやソフトで連携するデジタル運用で、その部分にいつまでも固執していては正しくカラマネを理解していると言えないよ。sRGBやAdobeRGBの白色点はD65だろうが、といつも言われるが、ライトルーマーの大好きなProPhotoRGBの白色点はD50。プリントするときに必ず行うカラマネ設定のプリントプロファイルの白色点もD50に近い値点で作られてるよ。C1のカメラインプットプロファイルもD50。Adobeもそうだと思うよ。
書き出したときに色が違うと感じていたのは単純にカラースペースの違いだけでなく、bradford変換による白色点移動が知覚的に100%完璧ではないからだろうね。もちろんそれは当然だし。一般ユーザーはその部分に手を入れる事なんてとても出来ないしね」
「話戻して4から5ではこんな感じになった」
当時はこれでちゃんと作業出来るじゃんと思って喜んだんだけど、調整スライダーをオプション押しながら表示したら画面が真っ黒になったので思考が止まった。
だめじゃん!と思わず叫んだ記憶がある。
説明をしながら友人の顔を見ると不思議そうな顔している。
「なんで?」
と聞かれたが、そんな事は知らない。こっちが聞きたい。中途半端に難儀でしょ。正しく改善されていないのだからしょうがない。
「何かモヤッとするでしょ」
と笑うしか無い。
「しかし、、」
「本当、変な事ばかり気にしてるね〜」
とあきれた顔で俺に言う。
「別にLightroomだけにあれこれ言ってる訳じゃないよ」
「CameraRawもDxOもDPPもC1にも不満はある」
実際そうなんだけど、Lightroom人気でその事に触れる機会が多かっただけだ。
僕はソフトを作れないし、作る立場じゃない。ユーザーとして正しく使いたいと願っているからあれこれ気になってしまうだけなんだけど、小五月蝿いのは性分だから仕方ない。
これは本当に昔からで、細かい事、論理的でない事は気になって仕方がないのだ。
で、今度のLightroomCCではその辺り直ったの?
と笑いながら聞いてきた。
「さすがにね。ちゃんと正しく動作してたよ」
「これでソフト校正を使って目的を正しく操作すれば、ちゃんと調整が行えるようになったと言うことだね」
そうだね。あれから随分時間が経ったけど、もうLightroomであれこれ言う事も無くなった。人に勧めるかどうかはともかく正しくソフトを使ってくれれば、しょうもないトラブルもかなり減るだろう。
「よし!俺もLightroomにしよう」
って本気かどうか分からないが友人は楽しそうに言った。
「いや、いいけど、、おまえC1じゃん」
でもな~、、と小さな声で呟いてしまったら友人は聞き逃さなかった。
「何か、まだあるの?」
「いや、たいした事じゃないけど、、たいした事か?」
「何だよ。言えよ」
「まさかのバグが出てる」
「バグ?」
「うん、いや、さすがに皆気がつくだろうし、次のバージョンアップで修正されるだろ」
まぁすでに気づかれずに製品版になってはいるけどね。今回は一般にBetaもなかったし。
「どの部分?」
「これは何の数値なの?」
そう聞かれてもこちらも分からない。まったく飽和していない数値から想像すると、またProPhotoRGBが表に出たがったのかね。と思ったりもした。
「どうするの?」
「は?どうもしないよ」
「ユーザーも多いし、これはさすがにすぐに気がつくでしょ」
「ま、俺らは何か言える立場じゃないしね」
そう言う事。
腹減ったな~と突然友人が叫ぶ。
気がつくと工事も終わって外は静かだ。
何か食いに行こうよと誘われたので、いいけど俺も仕事あるから飲みには付き合わんよ。と二人でコンビニに買い出しに出た。
日が暮れるとまだ外は涼しい。
溜まっている画像処理を気にしながらも外は気持ちよかったので友人と少し散歩した。
「新機能は書くの?」
「一段落ついて、もう少し検証したらね」
「それに、、」
「さっきは言い忘れたけど、現時点ではここ最近の新機能はほぼ同じになったけど、仕組み上お互いに違う部分はそのまま存在するしね。ワークフローの部分ではLightroomと同じではなく、「論理的」なデジタルの調整で考えればCameraRawの方が理に適ってる部分があるんだ。実用で考えれば解釈は微妙になるけどね」
「もちろん、それはLightroomだけじゃなくて、C1やDPPと比べてもと言うことだけどね」
「あ〜セミナーのRAW調整で話してるやつね」
「書くの?」
「さあね」
実際、現実には細かすぎる話で、なるほどとはよく言ってもらえるが、ほとんどの場合に非現実な解釈だと分かっているからその辺りについては未だ悩み中。
「でも、何だかまだ暫くバタバタしてるんだよね~」
「子供とも遊びたいけど、時間もお金もないからな~~」
後日また友人から電話があった。
「ソフト校正の数値のバグはすぐ治ったな」
開口一番そう言った。
「まぁね。他にもいろいろあったけど、今の所大丈夫そうだよ」
Lightroomはその後のバージョンアップで取り込みのUIを変更してみたり、一時面白いくらいに話題に上がったけど、そのあたりもすぐに元に戻す形で落ち着いた。
「ところで、新しい事務所は落ち着いた?」
「いや、緊急避難だったし、あれからずっと忙しくてね。全く落ち着かない」
急な事務所変更を余儀なくされ、随分バタついたし、小さなアパートで事務所と言うよりは、もはや倉庫?感も否めない。
まぁ今回は自分一人なので、撮影以外の仕事には十分だけどね。セミナーも2~3人なら何とかいける。
すでに、3回行ったし。
とりあえず、
「来年も宜しく」
<< ここでか、、泣ける・・・o(T... | 流されてるよね。。 >> |